思い出の場所に
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2010年12月30日
昨日、仕事の用事でたまたま川崎の方に行って来た。
登戸で電車を乗りかえて武蔵新城まで。
久しぶりに乗る南武線は駅の名前一つ一つまでが懐かしい。
私は小学校四年の頃まで、川崎に住んでいた。
その頃は電車に乗って出かけるというと
ずいぶん遠い所まで行くような
ちょっとしたドキドキ感があった。
その頃の、その思いで見ていた駅名が
私の中でその時の気持ちを思い出させる。
電車の窓に流れる景色さえも、
まるで自分を昔に連れ戻すかのように
懐かしく過ぎ去っていく。
武蔵新城駅で降り用事を済ませるともう昼過ぎ。
足取りは自然と昔の思いでの場所に向かっていた。
母校大戸小学校。
四年生の頃に引越してしまったので卒業はしていないが
やはり私にとっては大切な思い出の詰まった母校だ。
校門のインターフォンを押し事情を話すと、
若い女性の先生が小走りで出て来てくれた。
私が校舎建て替えたんですね!と投げかけると
「そうなんです。七年位前に。
中には入れませんが、校庭までならどうぞ」と、親切に案内してくれた。
「向こうの校舎だけは昔のままなんです。」
と、指差し教えてくれる。
校庭に出ると懐かしさで胸が締め付けられるようだった。
「こんなに狭かったっけなぁ」
小学生の頃の私にはあんなに広く感じた校庭。
そのギャップに不思議な感覚に襲われる。
風は冷たいのに、陽は優しく降りそそぐ。
子供達が野球をする声が響き渡る土曜日の昼下がり。
ごゆっくりどうぞと言われるままに
校庭の周りを歩きながら
心だけは昔に戻っていた。
大戸小を去る最後の日、
その日、大戸小50周年の記念集会が校庭で全校生徒を集め行われていた。
その集会が終わり
私が二年生の頃にお世話になった渡辺先生に挨拶をしに行った時、
先生が挨拶する私をみて
大きくなったねぇ!
立派になったね!と嬉しそうに微笑んでくれた。
そして最後に抱っこしてもいいかな
というと、私の体をひょいと持ち上げ
抱きしめてくれた。
沢山人がいる中で抱き上げられ
なんだか恥ずかしいながらも
そんな先生の気持ちがとても嬉しくて、
胸がいっぱいになった。
嬉しさと恥ずかしさと暖かさが混ざった
私の記憶の中の大切な思い出。
気がつくと、校舎を一周し校門の前まで戻って来ていた。
先程の先生にとても良い時間を過ごせたと感謝の気持ちを伝え
もしかして、昔お世話になった先生が今どうされているか調べられますかと駄目もとで聞いてみた。
「先生のお名前は、、、」
「渡辺真理子先生です」
「ちょっとわからないですねぇ」
かれこれもう20年ほど昔の事。
簡単にわかるほうがおかしい話だ。
でも、何千の言葉にも勝る一瞬の思いを教えてくれた渡辺先生に
いつかお会いして感謝を伝えたい。
思い出をそっと宝石箱に戻す様に大切に校門を閉めると
改めて現実世界に戻って来たかのような錯覚を覚えた。
名残惜しい校舎を背に帰路につく。
残る思いを振り切って、前を向いて力強く一歩を踏み出した。
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