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考えさせられる二人の病人の物語

2010年11月12日


昔、友達から聞いた話をふと思い出し
検索してみました。


いろいろと考えさせられる話です。
(前半は転載、後半は少し書き換えました)


ある病室に二人の男性がいました。その病室は堅い、灰色のコンクリートの壁に囲まれており、
小さな窓が一つあるだけで、他にはなんにもない、単調な部屋でした。


二人の男(サムとケディ)は病気でした。サムは病気がひどくて、
自分で身動きをすることはできません。一日中ほぼ寝たきりです。
ケディは、サムと比べれば少し症状が軽く、
自力で上半身だけ起き上がらせることができました。


サムは一日の大半は部屋の天井を見てます。首も動かせないからです。
毎日、同じ景色。同じ生活。サムはひどく退屈でした。
でも、たった一つだけ。サムには一つだけ、楽しみがありました。
それはケディの話です。ケディは時々上半身を起こし、窓から外を見て、
そこから見えたものをサムに聞かせていたのです。


「公園で小さな子供たちが楽しそうに遊んでるよ。砂遊びしてる子や
おいかけっこをしている子もいる。お母さんたちはベンチでおしゃべりしてるみたい。
お父さんたちは仕事かな?僕らもいつか結婚して、可愛い子供ができるのかな。」


「今日はすごい綺麗な青空が広がってるよ。桜も明日あたり満開かもね。
気の早い人たちが、もうお花見をしてる。僕らも元気になったら花見に行こうね。」


ケディの話を来る日も来る日もサムは聞いてました。


「ねぇ、いい匂いがしない?公園の前にあるパン屋さんが朝からパンを作ってるみたいなんだ。
お客さんは開店前から並んでるよ。よっぽど美味しいんだろうね。
僕らの病気が治ったら一緒に食べに行こう。早く治るといいね。」


「聞こえるかい?小鳥が鳴いてるんだ。すぐ近くの大きな木に止まって鳴いてる。
一羽じゃないよ。たくさん集まって、一緒にさえずってるんだ。
外出の許可が出たら、その大木のところまで行ってみよう。近くで聴くとすごいんだろうね。」


ケディの話を聞いているうちに、いつしかサムは、自分で窓から外の景色を見たい、
と思うようになりました。どんな素敵な景色が見られるんだろう。


考えれば考えるほど思いは募り、少し上半身を動かすことができるようになってきた頃でした。
ある夜、サムはケディが隣のベッドでもだえ苦しんでいるのに気づきました。
ケディの容態が急激に悪化したのでしょう。
ケディは一生懸命緊急のコールボタンを押そうするのですが、手がうまく届きません。


サムはあせりました。
早くコールボタンを押して誰かを呼ばないと。
サムの手元にはコールボタンがありました。


でもその瞬間サムは迷いました。
もしケディがいなくなって自分が窓側のベッドに移れば、
これから毎日あの素晴らしい外の景色を眺める事ができる。


サムのボタンを持つ手が震えました。
結局ボタンを押すことはできませんでした。
ケディがサムを見つめながら何かを伝えようと口をパクパク動かしていましたが
サムは目をつぶって寝たふりをしました。


翌朝には、ケディは既に息をしてませんでした。看護婦がケデイの遺体を運ぶ時に
サムは言いました。
「僕をケディが寝ていたベットに移動させて下さい」
望みは叶えられ、ついに念願のベットに移動することができました。


サムは、緊張と期待で胸を高鳴らせました。
看護婦が病室から出て行くのを確認した後、サムは痛みを我慢して上半身を起こしました。
いよいよだ。サムは窓の外に目をやりました。


窓の外には、病室と同じ、堅く、灰色の無機質なコンクリートの建物が眼前に見えるだけでした。

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